100S/Honeycom.ware

眠いよう。中村君に関しては書きたい事がいっぱいあるので寝てからにしようと思う。100sで一番いいよう。これから100sでやるって聞いて不安を覚えていたけどもこのシングルを聞いて「頑張れ一義」と素直に思える事が出来ました。
私が中村一義100sを聴く時には大きな違いがある。中村君のときは歌詞を結構気にして、いちいちその歌詞に立ち止まって、その意味を胸に抱いて聞いているって感じだった。どっちかって言うと「まず歌詞ありき」って感じだった。それはしょうがないよ。だって、金字塔で衝撃を受けてしまった人だもん。主題歌で恥ずかしげもなく涙が流れてしまった人だもん。私は中村君の音楽と、そして何より歌詞の内容に感銘を受けてしまった人だから。だからって音を聞いていないとかじゃないよ。過剰に意味を読み取りすぎていたかもしれないってことだ。
けど100sになってからあんまり歌詞を重視しなくなってしまった。いいことなのか悪い事なのか分からないけど。相変わらず日本語の使い方が独特で歌詞を音に乗せる絶妙さが凄いと思う。七尾旅人とは違った意味で、中村君もまた音遊びが上手いのだ。
サウンド的にも池田貴史さん(祝SUPER BUTTER DOG復活!!!)が入った事が本当に大きいんだろうなと思う。前回の、中村一義名義でありつつも100Sというタイトルであったアルバムは池田さん効果絶大だった。ソウルフルでワーム。ファンキーでグルーヴィー。宅録青年であった彼が、バンドの楽しさを覚え、そしてそんな心許す仲間と作ったサウンドだってのがとてもよく伝わってきた。スーパーバタードックのあのゆるぅーいファンキーさと中村君のでっかいソウルフルなハート、二人が音楽の根底にあるであろうモータウンポップスとかが合体した、素晴らしいアルバムだった。100sの時はどうしてもそういう、サウンド面の方を気にしてしまうし、「もう細かい事はどうでもいいや」と思ってしまう。だって、そういう音なんだ。「中村君は私たちを置いて先に行ってしまった」とかいう情けない泣き言を鼻で笑うような音だ。大きくて、暖かくて、そして手厳しい。くだらない馴れ合いなんてふんずけちゃうような強さがある。
まぁそんな事を言いつつも少しは寂しかったわけで。「ERA」の、あの最高のロックンロールサウンド100s名義になって違う方向に行ってしまいそうだったから。私にとってアルバム、「100s」は少しだけ物足りなかった。少しだけロックンロール度が足りない気がしたのだ。だから今後シングルやアルバムが100s名義で出される事がちと不安だった。
けどさ、このシングル聞いて安心した。「ERA」と「100s」の中間にあるような音だったからだ。ビートルズってよりもキンクスっぽい歌い方。更に磨きがかかったソウルフルな歌い方だ。そして白人よりは圧倒的に黒人っぽい歌詞の乗せ方。表題曲である「Honeycom.ware」はこの二つが交錯していて素晴らしいのだ。そして少しだけ枯れた、中村流ブルースに満ちた歌い方である「初終」。何言ってるんだかよく分からないんだけど音の勢いと流れに身を任せてしまう「B.O.K」。どれも中村君の唄歌いとしての才能が前面に出された作品だと思う。特に「B.O.K」なんて初期のくだ巻き酔っ払い路線に「君ノ声」や「グレゴリオ」系、そのまんまビートルズ、みたいなメロディーが加わって、更に「1,2,3」みたいなロックンロール節が加わっているし、最高だと思います。こういうのを100sでやってしまうんならもう不安はないな、と。「Honeycom.ware」の、全体の鍵を握るピアノも、要所を押さえるギターのリフも、ぐうっと押さえ込んでいるようなベースの音も、どっかに行きそうでしっかりここにいるドラムも、アルバム「100s」路線である「いつだってそうさ」とか「YES」みたいな鼻歌系ソウルなメロディーも、「これぞ100s」という感じ。
「Honeycom.ware」って言葉は色々連想させる。私はケミカルの「HERE WE GO!!」(「hry boy,hey girl」)を思い出してしまった。EELSでもいいけど。HONEY COMEなのかな。まぁ、人それぞれの取り方でいいけど、強くて明るくていい響きだなと思う。「HERE COME!!!」「COME HERE!!!」(こっちこいよ!!)。そんな強さも感じちゃったりして。「B.O.K」は「BAND(S) GONNA BE OK」の略みたいけど。(S)っていうのが泣かせるよね。<ニューエンブレムは『SONG OF FREE』>。そうなんだよ。私はまだ希望があるかもしれない。まだ信じるかもしれない。60年代にビートルズと出会った少年少女が感じたような事をまだ私たちは感じる事が出来ろうだろうか。もしかしたら誰かは「そんなのは時代の違いだよ」って鼻で笑い飛ばすかもしれない。けど私は信じてしまう。もしかしたら何かが変わるかもしれないって。想いの強さを、唄の凄さを信じてしまうかもしれない。中村君は私にそんな妄想を抱かせる。
私は前ほど中村君の歌詞に依存しなくなった。
だってさ、こんな事を歌うからだ。

君が望むのなら、しな。
君が望むのなら。
君が望むのならしな、しな。
心、生きるのなら。

決めるのは、全部自分だ。自分の人生を生きるのは自分だからだ。