Fatboy Slim/Palookaville

イイジャンコレ!!ってのがまず第一の感想。いやーこれいいじゃないですか。もっと騒ぎましょうよ。いや、大騒ぎしていたのに私が乗り遅れていただけなのか。ファットボーイスリムことノーマンクック先生の3枚目!!
かつてHOUSEMARTINSというネオアコ/ギターポップバンドに在籍していた先生ももうすっかり禿げ上がったオッサンです。ハウスマーティンズの頃は緑地にいかす男の人の写真を貼っていかにも「ネオアコ!!!」みたいなおっしゃれーなレコードを出したりしていたけども今や彼の代名詞はにっこにこの黄色のにこちゃんマーク。人は変化するものですよね。
この3枚目を聴いて思いました。「ノーマンも年取ったよなー」と。やっぱ年齢と音楽って微妙に関係していると思う。んで、この作品はその関係がとても良い風に現れた作品だと思う。この力の抜けたファンキーさ。ゆるゆる。腰が据わった音だなと思います。いやー緩い(笑)。これはおっさんが作った作品だよなって感じ。!!!の畳み掛けるような、時に暴力的ですらある「躍らせ」感はそれなりに若さが関係しているんじゃないかと思うんですけど、それと同じ理由でノーマンのこの3rdもおっさんの疲労感、しかも肉体的なものが絶対あると思う。
ヒップホップ調のボーカルがめちゃめちゃ加わって歌モノが増えた。その歌がすげーいい。オールドスクールのいいところだけもっていきましたーみたいな潔さと緩いグルーブの嵐。ギターの音があちこちにちらばっていて、しかもメロディーがキャッチーできれい。メロディーのきれいさは2ndでもあったけどね。こっちはそれに生音がもっと加わって、更に言うと泥臭さすら感じる。はっきり言うなれば「黒い」音が増した。ジャングルみたいな雰囲気の曲あるし、R&Bっぽさやジャジーさ、ラテンノリとかがすげー多い。一言で言っちゃえば「黒い」音楽の楽しさだけを詰め込んでます、みたいな(笑)
テクノで踊るのって疲れませんか。正直私は疲れます。でも楽しいんでいいんですけど。けど一晩踊ってると足とかやばいですよね。ヒップホップのライブやイベントって私は正直行った事がないので分からないんですが、ダブとかレゲエはあります。結構緩かったです。その緩さがとても良かった。ノーマンは絶対肉体的にしんどくなってこんな音にしたんじゃないだろうか。「そんなアホな」と言われそうだけどこれマジで。BPMがぐっと下がってさ、ハンドクラップとかR&Bテイストのコーラスとか入ってさ。ジャックジョンソン好きに大うけしそうな優しくグルーヴィーなギターとかあるし。「大人数を躍らせる」音ってよりは「友達とビール飲みながら馬鹿話しつつ踊ってる」感じの音だ。がむしゃらに踊るんじゃなくて、ゆらゆらだらだらしているって感じだろうか。BPMとか絶対そうだよ。疲れず踊れるテンポだ。勿論1st路線のあげあげっぷりや2nd路線のロマンティックな広がりもあるし、相変わらずノーマンの音は楽しさや嬉しさをぎゅっと詰め込んだような音だけどさ。
きっとノーマンはこのアルバムで「本当に自分が気持ちいい音」を求めたんだろうなと思った。1stがあれだけ売れてビックDJの代名詞みたいになってしまったノーマンだから。そんな事を妄想しながら聴いていたら本当にこの緩さが愛おしく思えてきた。
最後の曲本当にいいね。「プレイズユー」みたいなピアノで始まるの。でソウルフルな歌モノ。ゆっくりめの4つ打ち。力強い女性コーラス。ホーン。遠くで聞こえるスクラッチ。全てが喜びに満ちてる。思わず体を揺らしてしまう。楽しさや音楽への愛情に溢れた歌だ。ビッグビーチであれだけの人(100万人だっけ?10万人?)を躍らせたノーマン。彼がその後に出したアルバムがこんな音だなんて。やっぱり信用できる人だ。音楽とダンスと、そして笑顔を愛する人なんだろう。にこちゃんマークの必殺アルバムだ。最高。