2005年上半期、私セレクト

毎度のことですがコメントは後回しで。今週の宿題にします。
やっぱりね、好きなものはどんどん好きだと言うべきだと思いますよ。うむ、そういうのがいいじゃないですか。めげずに言い続けてれば分かってもらえる日が来るかもしれないしさ。

bonobos / THANK YOU FOR THE MUSIC(from「electlyric」)
本当はアルバム「Electoric」なんですけども、上半期セレクトの一番上に持って来るべきものとして、敢えて曲単位で。
「ハッ]としてしまう音に満ちている。リズムが、音の一つ一つが本当に生き生きしている。こんなにタイトル通りの音もないだろうっていうくらいに。力強いリズム。空に舞って行くような音。中村一義の「ハレルヤ」みたいに、音の一つが意思を持っているみたいだ。軽やかなメロディーも気負いのない歌声も、切ないギターの音もなっちゃんのベースも、全てが音だ。音だ。音。音。当たり前だけど音楽は音なんだ。まず音なんだ。音が生きていて、音が楽しく鳴っている。音楽は音だ。そんな当たり前のことに気付かせてくれた曲。
アルバムもダブをベースにしたポップサウンド。生音や打ち込みのバランスがすごくいい。そして音の配置の仕方がとてもいいなぁと思う。なっちゃんのベースは女の子とは思えないほどにかっこいい。bonobosは軽やかだ。このアルバムの空気も軽やかだ。それでもきっちり音は鳴っている。小さなお祝いのリズム!嬉しい時のビート!無理しないで歩いていく、そんなテンポの作品。

death cab for cutie / the john byrd e.p.
7月にはライブDVDも発売され、サマーソニックにも来日する、USインディーの良心(けどカナダのバンド)、デスキャブのサイトオンリー発売のライブアルバム。7曲入りなのですが、これが本当に素晴らしい。John Byrdというのはツアーエンジニアの名前なのだそうです。最後に90年代のインディー/ローファイの雄だったSEBADOHの「Brand New Love」のカヴァーが収録されているのですが、これが本当に素晴らしいです。曲の途中で少しの静寂の後、どっと溢れ出たように響き渡るギターの音が鳥肌モノ。
最早軽く「エモい」とは言えないほどの表現力。曲間の静寂やうねり、少し頼りなさげなボーカル、メランコリックなメロディーとドラマチックな曲展開、ため息がつくほどに様々な音を鳴らしていくギターなどが絶妙に絡み合ってとても存在感のある音。それに加えてドラムが本当によいのです。遊び心があって少々やんちゃな感じもして、色々な所で光っているのだ。聴いてて思わず微笑んでしまう。
デスキャブらしいスウィートさやポップさにも満ちているライブ盤。本当に、来日万歳!

DoF / Mine is May
Highpoint Lowlife(UK)ではなくてアメリカのAbandonbuildingレーベルより発売されたDoFの2枚目のアルバム。美しい生音とグリッチが奏でる涙モノの青春エレクトロニカ。青春が青い春というのならば、正にDoFのサウンドはそんな感じだ。爽やかに胸をきゅんとさせるメロディーが本当に素晴らしい。なかなかアグレッシブに動き回るグリッチやビートがいい味出している。大らかに流れていくサウンド、アコーステイックギターやストリングス、ピアノの音などが風や空気、そして様々な色を感じさせる。ドリーミー/アンビエント、それに懐かしさを足したような素晴らしい一枚。ジョセフナッシングをオーガニックにしたらこんな感じになるかもしれません(適当)
New Order / Waiting for the Sirens' Call
「Krafty」の良さに発売前から期待されていたニューオーダーの新譜。アルバム自体も1曲目のイントロで胸キュンな人多数と言うツボな作品だと思う。新しいことをやってるよ、誰にもないことをやってるよ、という作品ではなくて、今までのキャリアとファンのツボが上手く組み合わさってる。正に熟練のバンドだからこそ、こういう作品出せるんだろうなと思う。ギターの音がいつになく泣ける。泣けてキラキラしてるなーってだけでもういいんだけどね。全体的にバンドっぽいと思う。けどもどこまでもひたすらにNO節。
そんでもってやっぱりフッキーのベースは素晴らしい。

The Iveys / Maybe Tomorrow (紙ジャケ再発)
廃盤で高値がついていたのはぼんやりと知っていて、再発されたことも知っていて、それでもぼんやりと「紙ジャケ出ないかなー」と思ってたらホントに出た。そして即予約して買った。ビートルズの弟分、BADFINGERの前身バンド。きっと作品のまとまりとしてはBadfingerの方がもちろんのこと素晴らしいんだろうなと思うんですけど、アイビーズのこのアルバムに流れるファンキーさややんちゃっぷり、青臭さが好きだな。ストリングスの入った泣きのバラードが素晴らしい。表題曲でもある「Maybe Tomorrow」はどこまでも切ない1曲。
何年リリースかは忘れたけど録音が68年とか。そのくらい。

The Dead 60s / The Dead 60s
異端児なのかなんなのか。突如リヴァプールから現れたニューバンド。もう「クラッシュチルドレン」としか言いようがないパンク/ロック+ダブ/レゲエ/スカというサウンドをやっちゃった人たち。それに加えて最近流行していたポストパンク/エレクトロクラッシュをも内包してしまったようなダンサブルさ、鋭さをも兼ね備えていると言う、異端児にして正に2005年出るべくして出たバンドな気がする。Raptureや!!!がひたすらに暴力的に、野蛮にダンスダンスっていう方向に向かっていたのに対して、こちらは気だるくローテンションに、だのにひたすら攻撃的にロックンロールしているところが面白い。Gang Of Fourのような鋭さにジョーストラマーのような歌い方のボーカル、Talking Headsのようなダンサブルなリズム隊、Massive Attackのような気だるさ、それでも転がらずにはいられないスカやレゲエのリズム、目を覚ますような音響処理。とにかく今年の必聴アルバム。
7 SECONDS / Take It Back, Take It On, Take It Over!
アメリネバダ州のハードコアバンド7Secoundsの5年ぶりの新作。Kevin Seconds自らのプロデュース。メロディックハードコア。とにかく早くてメロディック。キャッチーさと哀愁の狭間にあるメロディーがすげぇって感じ。ハードコアだけどもめちゃくちゃ聴きやすくてかっこいい。ホント興奮してしまうくらいにかっこいいのでこれは是非聴いてほしいです。17曲28分。いかす。コーラスもすげーかっこいい。

THE PORTUGAL JAPAN / THE PORTUGAL JAPAN
熊本からやって来た女の子3人バンド、1stアルバム。ジャケットを見ただけでにんやりしてしまいそう。しかも一曲目のタイトルが「Joey」ですよ。多分これでピンと来る人はピンと来ちゃうでしょう。音はこのジャケットのまんま。比較的ガレージ寄りの70'sパンクサウンド。ぎゅいんぎゅいんのギターに爆走するドラムとベース(ベースの方はこのアルバムで脱退)。そして物凄く分かりやすい曲と「キャッチーだなぁ」としか言えないようなメロディー。パンク3コード論/パンクは下手糞でいい論/パンクに英語なんて関係ない論を地で行くようなサウンドです。激キュートなボーカルや揃うと何故か胡散臭いコーラスもいいんです。ガッツリ思いっきり音を鳴らしている感じがとてもかっこいい。たまに切ないメロディーがあったりして、とにかく楽しい!!いい曲揃い。今私が一番ライブを見たいバンドです。「No, I Want」に何度やられたことか。もう聴きすぎてどれもこれも口ずさめてしまうくらいだ。

NATSUMEN / Endless Summer RecordBOATのA×S×Eさんのバンド。中村達也氏も参加。
夏って別に爽やかじゃないじゃないですか。夏と言う季節は暑さや思い出が錯綜して実はものすごーく混沌としてるじゃないですか。正にそんな作品だと思います。
プログレッシブハードジャズと帯に書いてありましたが、まさにそんな感じ。
こんなに混沌と音が渦巻いているのにどっからどう聴いても夏。
想像力だとか刺激しまくりの音のやり取り、変拍子、ギターの炸裂っぷり。もうこの無茶苦茶なまとまりのなさが凄い好きになってきて、自分落ち着け、と思った。

nil / エクスカリバー
はい、もうみんなが苦笑している顔が見えますけど。「やっぱり」って感じですか。まぁいいや、当たり前じゃないですかー!
nilの2ndアルバムにしてあの3人最後の作品。まず特筆すべきこととして今までの作品と何となく毛色が違う。毛色が違うというのは、「哲君の色がとても強い」という点と、今まで「ニセモノのホンモノだ」とかいう部分で遊んでいた感じよりも本当に哲君がやりたかった音に近づいたのかな、という点だ。だから以前までのごちゃごちゃだったり何でもありだったり遊んでたりっていう部分が控えられて、より普遍的な方向の音になっているんだと思う。それを「nilっぽいとっかかりがなくなった」と捉えるのもありだと思うし、「本物っぽくなった」と捉えるのもありなんだと思う。バンドは変わるものだから、それを受け取る側だって様々だろう。以前ならこんなこと歌わなかったんだろうなと思えるような哲君の歌詞や曲が新鮮。nilの中では一番一般的に聴きやすい音だと思う。あの3人の演奏なのにあの3人とは思えないようなインストである「Horizon」がいい。
そして、結果として彼らは一人と二人で行く道を分けた。今聴いてみると、何となくそれを予言していたかのような作品なのかもしれない。
前半の「これでもか」と言わんばかりのストレートっぷりが圧巻。やっぱり私はnil好きだ。