2005年の10枚

さて。やってきました。毎年誰に頼まれるわけでもなく、むしろ押し付けがましい感じでやっているこの企画。今年の個人的10作品。




銀杏BOYZ / DOOR(ASIN:B0006TPGTU)

銀杏BOYZ / 君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命(ASIN:B0006TPGTK)
散々言っている事ですが、今年は銀杏が良かったです。1月に発売されたフルアルバム2枚組。
この歪んだ音が全て。
90年代。少年少女がグランジを求めた理由。
アメリカでNIRVANAPIXIESが指示されたのと同じように、今ここ日本で銀杏BOYZが支持されているんだと信じたい。
10代の頭の中ってのは基本的には犯罪スレスレの絶望的で病的な部分とびっくりするくらいにピュアで優しい部分がぐちゃぐちゃに混在しているのかなと思います。そしてそれをそのまんま鳴らしているのが銀杏BOYZなんだと思います。
SNOOZERも「十代ほど無力で、惨めで・・」みたいなことを書くんだったらちゃんと銀杏BOYZを取り上げるべきだったと思うよ・・。
タナソウ的に言うならば、こんなに無力で絶望的で優しくて音楽が大好きで暖かくてリアルな叫びに満ちた作品もないと思う。


今年はエモブームだったと思うんですよ。渋谷のタワレコでは大々的にエモコーナー展開されてるし、邦楽でもエルレガーデンを始めとして「エモい」バンドが活躍していた。
私自身はエモ好きで、好きなバンドもいっぱいいるのですが、最近のエモブームみたいなものに「うーん」っていう感情を抱いていて。何となくエモが形式化されている気がする。エモの発端が「エモーショナルなもの」と言うホント当たり前のことで、例えば男くささや殺伐感、ヘヴィさが吹き荒れていたアメリカで、いきなり泣き虫ノビタみたいなリバースが女々しくて情けないことをメソメソ歌うWEEZERだったり、日本だとブッチャーズみたいに日寄らずにひりひりとした空気感を持っていたバンドであったり、それらはある種何かの「反動」「カウンター」だった気がする。まー、ある意味パンクみたいなもので。で、そういう風に考えるとエモが形式として流行になってしまうっていうのはなんか違うんじゃないのかなーと。デスキャブもジョンオブアークもジミーイートもストレイテナーも全部まとめて一言で「エモ」で片付けられちゃう感じだし。何となく掴みきれない感がある。


そんな中で好きに音を鳴らした、好きに叫んだ銀杏BOYZ。「SEXTEEN」の聞き覚えのあるギターリフに歪められた音に涙。「skool kill」の妄想炸裂爆音っぷりに、「惑星基地ベオウルフ」の夜と歌声の優しさに、「NO FUTURE, NO CRY」-未来はないけど泣いちゃ駄目さ、「駆け抜けて性春」の絶叫に、「You & I VS The World」のイントロ。暗くて振り返りたくない十代を送った人も、思い出すだけで切なくなるような学生時代を送った女の子も。今普通に働いている人も、夢を追っている男の子も。
十代を、青春を通ってきた音がここにある。
「人を好きになる」という変わらないものもここにある気がする。
そして何より素晴らしいのは、音楽への愛情に満ち溢れている作品だって事。


それだけで充分なんだ。




Sigur Ros / Takk...(ASIN:B000AJJNPY)
上の銀杏とシガーロスが並ぶとなんか凄いなーと思いますが(笑)。銀杏と並んで私の中でツートップだったのがこのシガーロスシガーロスと言うとAgatis Byrjunのジャケットみたいに、深海であったり胎内であったりという割と暗く沈んでいくイメージだったのですが、この作品は光が見える。沈んではなくて、完全に天に昇華していくかのような音だ。ものすごい轟音の中から光が差し込んでくるような瞬間を音に出来るバンド。そういう意味でこのアルバムはシューゲイザーに近い気がしています。
壮大すぎて轟音過ぎて、美しすぎて息も出ないくらいの音の波。今までシガーロスというとどこかストイックで神がかってるなぁという感じがしていたのですが、今作は風や空気、外の光の気配を音に感じ、身近な感じがする。それは「Takk」(ありがとう)というタイトルに現れてるのかもしれにません。
フジロックでのライブは圧巻過ぎて言葉が出なかった。ほとんど「立ち尽くした」といってもいいくらいだった。その衝撃でしばらくシガーロスばっかり聴いていたくらいだ。
あまりに荘厳。美しい。
他にポストロックで良かったのはPELICANや、シガーロスのバックでやっている管弦楽隊、Aminaかな。北欧が熱かった気がする。




RATN(Riow Arai+Tujiko Noriko) / J(ASIN:B000AA7COM)
ポストロック部門の次はエレクトロニカ部門。DoF、Manualと迷ったのですが、やはり「あともう一回だけ」の素晴らしさに乾杯ということでツジコノリコさんを。
夏休みの終わり。伊豆修善寺のメタモルフォーゼ、踊りつくした朝方、PLANETステージで最後の最後にCALMが流した曲がこれだった。泣けた。
憂いと神秘さ、儚さを秘めたツジコノリコの歌とリョウアライの静かで穏やかな音が上手く組み合わさって、浮遊感に満ちた不思議な世界を作り出している。この感じは七尾旅人に近い気がするんですがどうなんだろう。「僕らはもう空を飛ばなくていい」などはそんな感じがする。どっちも声が中性的でふわふわしている(笑)。旅人君は時にリズムレスだったりしますが、こちらはちゃんとリズムが後ろで鳴っているし、そのリズム音が心地良かったりする。そう前に出てきて目立つわけでもないのに音が気持ちが良いというのも魅力的。
他にも今年はCapsulも面白いと思いました。




Clap Your Hands Say Yeah / Clap Your Hands Say Yeah(ASIN:B000AOJHZA)
今年のインディー部門でしょうか。ニューカマーなのかな。NYはブルックリンのバンドの1stアルバム。ブルックリン=The Might Be Giants=ひねくれPOPというイメージがあるんですが、見事そんな感じ(笑)。USインディーサウンドをベースにチープでローファイでソフトサイケな音全開。このよれよれボーカル、私はブライアンイーノの声に似てると思ったんですが、確かに巷で言われている通りにDavid Byrne(トーキングヘッズ)っぽい気もする。
今年はCYHSYとArcade Fireが人気だったなという気がする。両者の共通点ってきらきらしたTalking Headsっていう気がしている。上のエモの話とも関連しますが、どちらのバンドも今ありがちなドリームサウンド+ダンサブルPOPに陥っていないところがいいなと思います。CYHSYとArcade Fire、好みは人それぞれだと思うのですが、時にウェデイングプレゼントばりのギターサウンドを聴かせてくれるCYHSYを入れてみました。
ま、単なる好みです、はい(笑)。どっちも好きです。




Death Cab for Cutie / Plans(ASIN:B000AADYRQ)
そんでもってデスキャブ。メジャーから出した作品ですね。どちらかと言うと歌を前に押し出してきている作品なので、最初聴いたときに戸惑ったが、それでも矢張りM1の出だしからして素晴らしいと思う。デスキャブ=ギター!という公式でしたがこれを聴いて改めてデスキャブの歌心を感じた。M4などは特に。
デスキャブは安定して好きなバンドというか、「どんなバンド好き?」って人に聞かれたら、多分「デスキャブ」って言ってしまうと思うので、深い理由はなくベストに入ってる次第です。打ち込み主体の別プロジェクト、ポスタルサービスのシングルも良かったと思うし。デスキャブのライブ盤も素晴らしかった。セバドーのカヴァーとか。
いやー、本当にいいバンドだと思います。サマソニで見られて良かった。




Animal Collective / Feels(ASIN:B000AMSRO4)
私の中でアニマルコレクティブやディベンドラバンハートっていうのは「WIRE系」「FADER系」として捉えられている(笑)。「ユニオン系」でもいいのか。<そのジャンルよっぽど好きな人しか買わないけどそのジャンル好きな人なら大体知ってる>っていう。邦楽で言うゲロリゲゲゲなり花電車なり村八分なりっていう感じでしょうか(笑)
ディベンドラ筆頭とするネオフォークが密かに盛り上がってる感じもしますが。アニマルコレクティブの新譜が素晴らしかったんで入れてしまう。NYのポストロック寄りのバンドですが、今作はポップでサイケ。ストレンジでファニー。様々な音が奇妙に捩れて交じり合っているのに不思議に心地よい。万華鏡。壊れたドリームランドっていう感じの音だ。夢みたいなのに居心地が悪い。そんな面白い印象を受けるのは音の作りが複雑だからなんでしょうか。
世界観としてはフレーミングリップスやAriel Pink's Haunted Graffitiに近い気がします。
しかし今CYHSYもそうだし、NYの音楽がかなり熱いんじゃないですかね?一筋縄ではいかない音楽をやっている人が多い気がする。またそれを受け入れる土壌があるんだろうな。羨ましい。ということで来年も引き続きNYに注目ですかね。




ソウル・フラワー・ユニオン / ロロサエ・モナムール(ASIN:B0009OASR2)
邦楽もいいバンドが多かった。JAZZやラテンも織り込んだジャムバンド、Supecial Othersや、ROVOのようにぐいぐいあげて躍らせるDachambo、ブルース交じりの気だるさとパーティーを歌うtobaccojuice、そしてthank you for the music!!のbonobos。どのバンドも比較的泥臭い音っぽい気がするな(笑)
そんでもってソウルフラワーの新譜が良かった!軽やかで優しくて大きい音になった気がする。雑踏や下町のごちゃごちゃさを音にしたような感じなのですが、ばらばらっていうわけでもなくて、しっかり土台がある上でやっている感じなので、聴いていてとても楽しめるし安心して踊れる感じがする。うん、踊れる!!
最近はこういう地に足の着いたような音のバンドが凄く好きで、同時に踊ることがベースにあるバンドがとても好きです。
「松葉杖の男」は名曲。
銀幕と希望が好きで、笑い顔がいい男。





THE PORTUGAL JAPAN / THE PORTUGAL JAPAN(ASIN:B0007TFBUS)
色々な人に「これはいい!」と薦めまくっていた、そして上半期ベストにも入れてしまったお気に入りアルバム。熊本の女の子バンド、ポルトガルジャパンの1stアルバム。バンド名も面白いけど、まずはこのジャケット!どピンクに、パンクやガレージが好きな人ならきゅんとなるかもしれないこの写真。
そしてジャケ通りにガッツリ鳴らされた音でにやにやが止まりません。ガレージ寄りのパンクサウンド。1度聴いたら忘れられない曲のオンパレード。最後にイギーポップのカヴァー。
最近こういう思い切りのあるバンド、パンチのあるバンドに出会わないなぁという気がしていて。かっこいいサウンド、スマートさや勢いのあるバンドはいっぱいいるけど。私にとってのポルトガルジャパンは昔ギターウルフを聴いたときの感じに似ていてですね。理由はないけどたった一度の試聴で夢中になったという感じです。好きな音をガッツリ鳴らせてしまえるその根性が大好きなので、今年の名盤入りです。




James Chance & Terminal City / Get Down and Dirty!(ASIN:B000BKTDVQ)
最後の2つはニューウェーブ/ポストパンク経由。一応10枚選ぶ際に「新譜にしよう」と決めてたのですが、今年はリイシューもいいの多かったんで入れたかったな。そんなわけでJames Chance新譜。想像以上にジャズ&ブルースが強いR&Rアルバムに仕上がってます。というかジャズなんだと思います、はい。
これがもうむちゃくちゃかっこいい。退廃的なピアノの音も怪しいベースラインも素晴らしいですが、チャンスのボーカルとサックスが群を抜いて素晴らしい!!ものすごい存在感。
ジェームズチャンス(若しくはコントーションズ)って言うと12月に紙ジャケ化された「NO NEW YORK」を思い浮かべる人が多いと思います。私はチャンスの「NO WEVE(POST PUNKだったかもしれないです。記憶曖昧)の源流はフリージャズである」っていう言葉が強烈に印象に残っててですね。あの吹き荒れる音の奔放さや自由さ、その裏の知的さなどはもろにそうなんだろうなと思った。
このアルバムはもろにジャズ色が強いのですが、夜の街の路地裏のような空気で統一されていて、曲のコンセプトが強い気がする。
ストパンク、ノーウェーブの剃刀イメージで聴くと「うわあっ」ってびっくりするくらいに印象は違うと思いますが、私なんかはこっちの方も気に入ってます。
どっちにしてもクール。





Gang of Four / RETURN THE GIFT(ASIN:B000B5QWO2)
これがまた。新譜にしていいのかは微妙ですが、素晴らしいので入れる。ポストパンクの雄、我らがGOFのセルフカヴァーによるベスト盤(※もうオッサンたちです)
音が太い。剃刀ギターに加えて音が重くなっている。うーむ。しかも声が明らかにおかしいと思う。明らかにちょっと壊れている人っぽい(笑)。さすがにフジロックで楽器破壊しただけのことはあると思う。みんな「GOF再結成って言ってもなぁ」みたいな感じでステージを見ていたらしいが、いざライブが始まるとあまりの凄さに息を呑んだらしい。そんな現役バリバリなバンドに敬意を表してのベスト。と言うか今普通に聴いてもこんなにかっこよくていいんだろうかと思ってしまう。再結成GOFがこんなにヤバい音を出しているんだから、00年のリバイバルバンドも頑張らないといかないですね。
ノーニューヨークの紙ジャケ化、ポップグループ関連の再発、マークスチュワートのベスト、アリアップの新譜、RipRig Panicの初CD化と言い、今年もニューウェーブが凄かったですよねぇ。1月のTHIS HEATでこの流れも一段落かなという気がしているのですが、どうなんでしょうか。


次は何でしょうねぇ。ネオアコかな?(笑)