ユメギワノラストボーイ


SUPERCAR / JUNP UP(ASIN:B00000JODK
突然ですが今も昔もずっとスーパーカーが好きです。

とりわけこの、2ndのジャンプアップが好きです。
(こんなやる気のない僕であっても)(私であっても)(この世界の中で)「夢見てたっていいんだ」「夢はかなえるものよ」っていう名盤1st「スリーアウトチェンジ」を経て製作されたこのアルバムはジャケットのように白く白く感情を漂白された(と、元SNOOZER加藤さんが言っていて「上手い!」と思ったのです)内省的な作品だった。
つまんないことばっか言った気がした。夢見てたっていいって歌だった。恨みばっか買った気がした、と最後に呟くように歌われるくらいだった。このアルバムの中では静かに時が流れ、どこまでも平熱感が漂っていた。ブチブチと『無機質な』レコードノイズが曲を繋いだ。けれど『それがとても暖かい気がした。』
始まり方がいいのだ。ギターノイズ。ガガガガガガガと大音量でかき鳴らされるギター。全体的な静かさと、1曲目のこのギターのバランスが大好きだ。ギャギャギャギャギャと鳴っていても、べったりとした感情はない。どこまでも淡々と鳴らされる音だ。「(ロックに良くある)サビの感情こもった哀愁のギターソロ?え?何それ?聞こえない」っていう感じなのだ。
歌詞も冷めている。
「若い世代になんて愛なんてない」「長いもんには巻かれたい」「時代が時代さ」「損な方を考えてみなよ」「誰かの何かが誰かを傷つけたように」などと歌うのだ。けれどそこに過剰な絶望はない。どこまでもフラットだ。
「つまんないことで悩めるのはつまんない僕が好きだからさ。」
一番大好きなフレーズ。つまらないことでばっかり悩んでいても、そのつまらないことがものすごく大事だったりするんじゃないのかって。大学生の頃ずっと思ってた。


大学時代なんてやりたいことも見つからずに、だけど時間は膨大にあって、音楽ばっかり聴いていた。大げさな夢や希望なんて見つからなかったし、将来に期待なんて見いだせない気がした。そもそも大人になれるのか不安だったし、モラトリアムを抜け出せるはずなんてないよって思ってた。つまらない悩みでいじいじしていた。大きな悩みにぶち当たるには臆病だったし、現実的な問題に躓くほど社会に出てもいなかった。どこまでも宙にぶらさがっている感じがした。
モラトリアム、青春。そんな言葉に縋っていたのかもしれない。


ジャンプアップには過剰な期待やロマンはない。けれどもどこまでも現実的な大きな問題もない。そこにあるのは小さな悩み。小さな恋。青春の焦り。モラトリアムの終わり。少しの笑い。ほんの少しの明日。疲れた自分。つまんない自分。それでも少し偉そうな自分。プライドを捨てきれない自分。自意識。
歌。音。


ぼんやりと続いていく毎日。あの頃は「毎日がこうやって続いていくんだろうか」と諦念を抱き、ぶらぶらとしていたなと思う。そこで答えが出たわけではないし、その結果1年くらい何もしないでいたりしたので「あちゃー」という感じだけど。今その頃の事を思い出すと、それは別に無駄じゃなかったなと思うのだ。
小さなことに悩む自分。そういうのが好きだったのかもしれない。



毎日乗る電車の中でそんなことを考えていた。
だからなにって言われればそれまでなんだけど。
無理に答えや意味を求めなくてもいいんだと思う。



意味なんてない 意味なんかない 今にも僕は泣きそうだよ



そういう歌を思い出した。