七尾旅人 / オモヒデ オーヴァ ドライヴ




世界中からそっぽを向かれた少年が物語を呟きだす。
少年の周りの空気が振るえ、世界が振動し、その結果とても美しくそしてとても寂しいメロディーが生まれる。

1998年、邦楽シーンがとても盛り上がっていたその裏で静かに生まれた、七尾旅人の傑作1stシングル。


この後、様々な歌い方や発声方法や曲のパターンを身に付けていく七尾君だが、この作品はシンプルなアコースティックソング4曲。
何もかもを受け入れて何もかもを否定するかのような、美しくも儚いメロディー。
生まれたての赤ちゃんの不安感情を全てひっくるめたような、震えて消えていきそうな歌声。
どれもが恐ろしいほどの10代の生々しさだ。背中に戦慄が走るくらいに。


そこにあるのは世界から取り残されてしまった絶望感や、世界への憎悪、届かない貴方。自分を追いやった世界への渇望。己への嫌悪。


ある種の人々の耳と心を捉えて離さない音楽。
中古屋でちょっと値段が高くても是非とも聞いて欲しい作品です。