どんどん季節は流れて

SNOOZERが廃刊だそうだ。
また一つ、自分の中で大きな区切りの季節が来たのだなぁと思った。



音楽雑誌「snoozer」に関するたいせつなおしらせ
http://www.littlemore.co.jp/news/books-magazines/20110428239.html



私がインターネットというものに出会ってちょろちょろと書物をしだしたのは大学に入った年のことで、ちょうど1998年のことであった。SNOOZER的な文脈で言うと「98年世代」ってことで、邦楽で良いバンドがたくさん出てきた時期だった。中村一義七尾旅人くるりナンバーガールにミッシェルガンエレファント。高校の頃、元々音楽が好きだったのもあるけれど、「もっと誰も知らないかっこいい曲が聞いてみたい!」と背伸びしたつもりで本屋で適当に手にとったのがSNOOZERでした。そうしてCD屋で「この真っ青なジャケットが何だか気になる」と手にしたのがスーパーカーのスリーアウトチェンジで、心をじゃぶじゃぶと洗われるような轟音ギターと甘く囁く低体温ボーカルはたちまち私を虜にした。バイトが出来ずにひと月に1枚のCDが買えればいい方だった自分が、バイトを始めてようやく自分で稼げるようになって、ちょっとずつ自由になって、18歳を過ぎたからオールナイトのクラブイベントに行けるようにもなって、閉塞していた退屈極まりなかった高校時代からやっと少し抜けだして新しい世界に足を踏み出せたような新鮮さがあったなーという気がしていたのを覚えている。
大学でFACK FACTORYというふざけた名前の音楽サークルに出会い(入ってからそれがDJサークルだったんだと気付いたんですけど)、SNOOZERを馬鹿にされ、それ故に更に世界が広がり、あの頃は暇さえあればCD屋に通いつめていて、サークルで海辺の花火大会に行っては馬鹿騒ぎをしたり、合宿という名のただの旅行ではカラオケルームを借りきってターンテーブル持ち込みーので踊りまわり、友達とライブやらパーティーやらではしゃいではビールを飲むという、駄目な大学生であった。今思えばきらきらしているよなぁ。青春!なにそれ!そんなの自分には存在しないとか思ってたくせに!こうやって過去を振り返ればそれなりに青い春を謳歌していたのだなと思う。楽しいことばかりではありませんでしたが。というかモラトリアム特有の先行きの不安やらブルーなこんがらがったなんやらは抱えておりました。だからこそスヌーザー読んでたんでしょうね、きっと。
個人的には渋谷ブーム全盛だとか、クリエイションやシューゲイザーにリアルタイムで出会えた人の方が羨ましい限りなのですが(まぁそれはパンク然り、NW然り、リアルタイムで60年代70年代の音楽を体感出来た人は本当に羨ましいです)、今振り返っても90年代後半もそれなりに面白かったなぁと思う。RAINBOW 2000があり、フジロックがあり、UNDERWORLDThe ProdigyATRみたいなのがいて、WARPがあって、シカゴの音響派があって、IDMとかエレクトロニカっていうのが出てきて、ブレイクビーツとかドラムンベースとかビッグビートがあって、ねぇ。糞だ糞だと言われてましたけど。っていうかタナソウ自体が「なんもない年でした」みたいなのを年間ベストの記事に書いてませんでしたっけ。99年?98年?
大学時代はSNOOZERと共にあったなと思う。新しい音楽に出会っていくのが本当に楽しかった。今でも楽しいけどね。けれどあの頃みたいな熱狂はないかもしれない。スヌーザー自体が「MAGAZINE FOR GIRLS & BOYS TANGLED UP IN BLUE」というブルーにこんがらがったボーイズ&ガールズに向けた雑誌であり特定の世代に向けたものであることからも分かるように、この雑誌は読者が「卒業していく」「ある時期に通過する」ものであると思うので、アラサーばっかりの私の周囲は「最近は買ってない」という人ばかりなのですが、だからこそ廃刊は寂しいな。青春時代に大好きだったバンドが解散したような寂しさを感じる。お疲れさまでした。