絶望だらけの世界で喜びを見つけるには?―――『13 Reasons Why/13の理由』Season 2

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昨日5/18の夕方、『13の理由』こと『13 Reasons Why』のシーズン2がNetflixで世界同時配信されました。
その時間帯はTwitterで「#13ReasonsWhy2」というタグがバズっていたりもしていて、きっと昨日の夜から今日にかけてビンジウォッチング(※ドラマ一気見)で寝不足って人が世界中に存在したのだろうと思う。前述のタグでツイート検索すれば色んな言語が溢れている。
もちろん、自分もビンジ組である。
『13の理由』というドラマはメンタルがりがり削ってくるタイプなので、見終わった後にふーっと虚脱してしまった。
加えてテキサスの高校での銃乱射事件のニュースですよ。ネタバレはしないけれど、シーズン2の内容に一部被っているところがあり、気持ちが重くなってしまった。しかも容疑者の子はいじめられてたとかもう……。救いの無さに本気で涙目になってしまいました。

 
『13の理由』のドラマ自体は前にも紹介したことあるのですが、小説が原作のドラマです。
アメリカのリヴァティー高校である少女(ハンナ)が自殺する。少女は自殺する前に「自分が自殺に至ることになった13の理由」を13本のカセットテープに残している。1本につき一人のペースで、彼女と彼女の周りの人間に何が起きたのかが語られていく……という青春ミステリー仕立てでした。ティーンの繊細さや愚かさや未熟さ、高校という閉じられた世界の残酷さや理不尽さが丁寧に、そして生々しく描かれた素晴らしい作品。
もちろん、アメリカが舞台だから日本とは異なる価値観も出ては来る。
でも大多数の視聴者が感じるのはドラマに出てくる様々なティーンへの圧倒的な共感なり、親近感なのだと思う。そうでなければここまで世界中で話題にはならないだろう。
 
シーズン1でハンナの身に何が起きたのかはほぼ判明しているので、誰もが「シーズン2なにやんの?」って思ったはず。
今回のシーズン2ではシーズン1の出来事を踏まえて、ハンナの両親が学校を訴えるってのがメインストーリーになります。1ストーリーで一人ずつ証人として裁判に招かれ、シーズン1では語りきれなかった部分を掘り下げていく感じ。途中、「やや冗長気味かなぁ」と感じる部分もありましたが、後半は上手く盛り返してたと思う。シーズン2で印象がだいぶ変わった子も何人かいるし。と言うかハンナへの印象もかなり変わったのでは?、って感じです。
評価が別れるとするならシーズン2でのハンナの登場部分だと思う(ネタバレはしない!w)
正直あのハンナがありかなしかと言われれば「うーん」て感じなんだけど、でもあのハンナがあるからこそ、クレイ(主人公の男の子/ハンナのことが好きだった)の弔事は泣いた。大人しそうで真面目で奥手で、見るからに童貞キャラなクレイは本当に純粋にハンナを好きだったんだなぁっていう。裁判を通してハンナへの印象が変わっていく中で、クレイがハンナに怒ったり、嫌いになったり、失望したりもするんだけども、それを乗り越えての最後であの弔事なのが……。決して力が強いわけでもなく、目立つタイプでもないけれど、でもやっぱりクレイは芯のある子だなぁ。
 
 
 
シーズン2はストーカー呼ばわりされてた写真少年タイラーに友達(パンク少年)が出来て良かった。
ある時、ものっそい理不尽な怒りに苛まれていたクレイをタイラーが気分転換に誘う。それが森の中で銃を撃つことなんだけど、その描写にアメリカの病理を感じたなぁ。なかなか弾が当たらないクレイにタイラーが「的に名前を付けろ」って言うんだよね。「憎い奴の名前を」と。それでクレイがめっちゃスッキリしちゃうという。
そのシーンを見ながら「なんかフラグっぽくてやだなぁ……」なんて思っていた自分なのですが、ドラマ内のフラグ云々よりも、上記のテキサスのニュースで犯人の子が「憎んでいるやつを狙って撃った(好きだった子は撃っていない)」と話していると知って、そっちの方にショックを受けた。まぁ単なる偶然と言えばそれまでなのだけど、『13の理由』がそのリアルさに評価を受けていただけに、そんなところまで現実とリンクしないでくれ……と悲しくなった。
 
 
 
相変わらず心のもやもやが晴れないドラマだった。
悪い意味ではない。
だって完璧な人間なんていないのだから。誰しもが間違いを犯すし、大人だって弱いときは弱いし、みんな暴かれたくない過去の一つや二つは持っている。触れられたくない傷だってあるだろう。それが十代なら尚更だ。ハンナも含めて登場人物誰しもが未熟だったから、あんな事件が起きたのだ。
シーズン2ではそんな彼らが変わろうと、前に進もうと足掻いている姿が特に印象的だった。
同時に、変わろうとしても変われない姿だとか、己は変わったはずなのに世界は変わってくれない、というやり切れなさも印象的だった。
全ては複雑に絡み合い、こんがらがっていて、すっきりとは終わらせてくれない。
でもだからこそ、「地獄だ」となじられる高校生活を送っている彼らには光が寄り添っているのだなとも思った。必ず終りが来るパーティーの場で、悲しみを振り払うかのように笑い、泣いていたクレイたちの姿はとても刹那的で、輝いていて、多くの視聴者が己の十代を思い出しては胸を痛めたのだろうなと思った。
 
 
 
あと、相変わらずインディーばりばりの選曲が素晴らしかった。特にビリーアイリッシュ!! 今のアメリカのティーンとかヒップホップばっかりで、インディー聴いてるのなんかナードな子ばっかりだと思うから、余計にぐっときた。